アスベスト調査報告の義務化


2020年から義務化されていたアスベストの事前調査は、2022年4月1日以降に着工する建築物(個人宅含む)・解体工事・改修工事について、さらに調査結果の報告義務が追加されることになりました。これらの規定に違反すると、アスベスト解体工事に関連する補助金が申請できず、処罰の対象となります。

アスベスト(石綿)とは、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。アスベストの繊維は肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因といわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。日本国内では現在、アスベストの製造・輸入・新規使用は認められていません。

新規の建築物にアスベストを含む建材が使用されることはありませんが、一方で、解体する建物については、現在はまだ2006年以前に建てられたものが多くあります。
このような背景から、建物を解体・改修する前に、アスベスト調査の義務化が決定されました。

義務化の開始時期


アスベストの事前調査は2020年より義務化されており、さらに2022年4月1日着工の工事からは調査結果の報告についても義務化されました。
調査結果を報告しなければ、工事に関する補助金の申請ができません。

対象となる工事


事前調査は、工事規模や請負金額に関係なく、原則としてすべての工事が対象となります。

ただし、一定規模以上の工事をする場合、施工業者が労働基準監督署と自治体に対して、事前調査結果を報告しなければなりません。
報告対象となる工事は次の通りです。

・建築物の解体工事(解体作業対象の床面積が合計80平米以上)
・建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))
・工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))

なお、畳や電球の交換、木造建物の木材部分に穴を開ける、などの軽作業についてはアスベスト調査が免除されます。
詳細は環境庁が発表している「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行等について」を参照し、不明な場合は、生活環境保全課にご相談ください。

怠った場合の罰則


アスベスト事前調査の報告を怠ると、大気汚染防止法に基づき、30万円以下の罰金が課せられます。
また、アスベスト除去などの措置義務に違反すると3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

調査・報告の流れ


アスベスト調査は、大きく以下の流れで進めます。

①専門の調査者に依頼
アスベスト事前調査は、アスベストに関する知識を有しているだけでなく、建築物の調査に関する実務に精通している専門家に依頼しなくてはなりません。具体的には、建築物アスベスト含有建材調査者、一般社団法人資格であるアスベスト診断士、アスベスト作業主任者のうちアスベスト除去作業経験を有する者などが対象です。特に、2023年10月以降は、厚生労働大臣が定める講習を修了した、建築物アスベスト含有建材調査者の調査が義務化されます。

②書面および現地調査
図面や聞き取り情報を入手して行う書面調査は、現地での目視調査の効率性を高めるための重要な工程です。その後、アスベストの使用状況を全体的に把握するため、現地で目視調査を行うことが必要とされています。場合によっては、現地で採取したサンプルを定性分析にかけ、アスベスト含有率(0.1%以下か否か)を確定させます。

③報告書作成
事前調査を行う業者は、調査結果をもとに報告書を作成します。この報告書は解体工事開始の14日前までに労働基準監督署に提出し、3年間の保管が義務付けられています。解体するすべての建材に一切アスベストがなかった場合でも報告書は提出しなくてはなりません。

工事の流れ

必要な届け出

アスベスト除去工事に際して、以下の届け出をする必要があります。

①工事計画届出書:労働基準監督署へ「作業の14日前まで」に提出
②特定粉じん排出等作業実施届出書:各都道府県知事へ「作業の14日前まで」に提出
③建築物解体等届出書:労働基準監督署長へ「作業日まで」に提出

除去工事の実施

除去工事は、おおまかに以下の流れで行います。

①解体工事の近隣住民への説明
挨拶だけでなく、工事についての説明を行うことは必要不可欠です。
後のトラブルを避けるためにも、真摯かつ丁寧に説明を行います。

②除去工事の実施
工事内容について明記した掲示物を「周囲の人々が見える位置」に設置し、工事関係者以外の立ち入り禁止を徹底します。
足場を組み、アスベスト飛散防止用のシートで建物全体を覆い、浸透性の高い薬剤(飛散防止剤)を散布します。
専用の機械や工法を用いて、アスベスト含有建材を撤去し、その後本格的な解体工事へと移ります。

③アスベストの廃棄
アスベスト含有建材を撤去します。
アスベストが飛散しないよう、慎重かつ的確に除去を行います。
「廃石綿等」として処理しなければならないため、通常の破棄物とは扱いが異なる点に注意します。

費用


アスベスト調査における費用の内訳としては、主に以下のものがあります。
・事前調査費用
・分析調査費用
・サンプル採取費用

事前調査費用

書面調査(第一次スクリーニング):2~3万円(1現場につき)
現場調査(第二次スクリーニング):2~5万円(1現場につき)

分析費用

定性分析:3~6万円(1検体につき)
定量分析(X線回析分析法):3~6万円(1検体につき)
定性分析+定量分析:4~10万円(1検体につき)

※定量分析とは、定性分析で建材にアスベストが含まれていると判明した場合、どのぐらい含まれているかを調べる方法です。
より正確に分析を行うため建材から試料を採取して行う場合は、別途サンプル採取費用がかかります。

アスベストの除去費用

アスベストは「発じん性」によって3つのレベルに分類されます。

レベル1
柱や梁、天井にアスベストが吹き付けられていることが多いため、最も発じん性が高く、慎重に作業を進める必要があります。
このため除去費用が高くなりやすく、費用相場は1.5~8万円/㎡程度です

レベル2
建物の内壁や配管、柱に施工されていることが多い、アスベスト含有保温材やアスベスト含有断熱材、アスベスト含有耐火被覆材も発じん性が
高くなり、レベル1と同様に慎重に作業を進める必要があります。
費用相場は1万円~5万円/㎡程度です。

レベル3
屋根材やサイディング外壁材にアスベストが採用されているケースです。
レベル1と2に比べると危険性は低く、手作業で行う場合もあります。
費用相場は0.3万円/㎡程度です。

補助金について


国土交通省は、民間建築物に対するアスベストに対して補助金制度を設けています。

アスベスト調査費用補助対象となる建築物

・吹付けアスベスト
・アスベスト含有吹付けロックウール
・吹付けバーミキュライト
・吹付けパーライト

補助金額

1棟あたり25万円

支給対象や支給額は自治体によって異なるので、窓口に相談する必要があります。